PX-5600発表会報告その2
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今回はプレス発表ではなかったのですが、はじめにエプソンが想定しているPX-5600のターゲット層についての説明がありました。
ま〜、私ごときが心配する必要はないのでしょうが、昨日のブロガー向け発表会やバンドルアプリケーションなどから見て、エプソンはPX-5600をどういった層に売りたい、あるいは売れると思ってるのかな〜と。
この中で見て取れるのは、3年前に発売された5500の時より、ターゲット層をハイアマチュアの方に拡大してる、ということです。
突っ込み入れると、カメラのプロフェッショナル機〜エントリー機のヒエラルキーを用いて、「プロフェッショナル機やミドルレンジ機を持ってるお客さま」が対象と言ってしまうのはどうなのかな〜と・・・・。
今のエントリー機でも、十分A3がプリントできるクオリティーがあるわけでして、「所有してるカメラ」によるクラス分けは、あまり当たっていないような気がします。
加えて、ではコンデジしか持ってない人は対象にならないのかと言うと、コンデジでも1000万画素の時代だし、これまたハイクラスのコンデジは、十分A3に伸ばせる画質があるわけです。
て、まあ、このあたりは、揚げ足取りですね・・・・(^_^;)
で、アマチュアの要望を取り入れて、バンドルソフトにEasy Photo Printを追加したと説明されてるわけなのですが、ちょっとPX-5600にバンドルするにはお粗末なような・・・・。
このソフトはRAWからもプリントできますが、まず、RAWを使う人というのは、イージーな調整しか出来ないソフトでは満足できないと思います。
調整とか小顔補正とか、加工についてはJPEGのほうがやりやすく、JPEGでは出来るのにRAWでは何で出来ないの?ということでは、ストレスが溜まります。
それに、仕方ないにしてもプレビューの表示は遅いですし、EOS1D系のプロ機のデータには対応してないですし。
ただ、プロだって簡単にプリントしたい時だってあるわけでして、私も使ってみましたが、JPEGをL判にどんどんプリントしたい、しかも日付入れて〜、なんて時には、オートファイン!EXの自動補正におまかせでやると、楽ちんキレイなプリントが出来ます。
なので、この手の簡単ソフトはありがたいのですが、ソフト自体は先ほどのヒエラルキーから言うと、エントリー〜ミッドレンジを対象にしたものなので、バンドルするならもうちょいリファインして、「プロフェッショナル〜ミッドレンジのお客さま」でも満足できるように機能を充実させて欲しいものです。
さて、エプソンのプリンタにPhotoshopElementsがバンドルされるようになったのは、PX-5500からです。
それ以前は、スキャナには同梱されてましたが、プリンタには付いてきませんでした。
PX-G5000にも同梱されていません。
私はPX-5500が発売された時、なぜバンドルされるようになったのか?と考えてみたことがあります。
PX-5500が出た3年前、カラーマネジメントのワークフローの中では、モニタとプリントの色味を一致させるには、モニタキャリブレーションとPhotoshopでプリンタプロファイルを使用するというのが定着しつつありました。
しかしながら、PX-5500以前の機種、つまりPX-G5000までは、メーカーのプロファイルを使っても、プリントの結果がイマイチでした。
メーカープロファイルが合わない原因は、プリンタは同じ機種でも機体の個体差があるので、それを吸収したプロファイルでないとマッチングしないためとされました。
そのためi1などで、カスタムプロファイルを作る必要があり、事実そのほうがマッチングが良くなりました。
なので、メーカーも、自信を持って自社プロファイルを使って、Photoshopで変換するフローを推奨出来なかったのではないだろうかと、私は推測しました。
しかし、PX-5500は、工場出荷時調整の追い込みをセールスポイントのひとつとして登場。
機体の個体差が少ないのを売りにしていました。
機体の個体差が少ないということは、メーカーのプロファイルを使っても、結果にばらつきが少ないということだと解釈できます。
なのでエプソンは、PX-5500において、はじめてドライバ以外の色変換、つまりPhotoshopによるカラーマネジメントに対しても、対応できるようになったとして、Elementsを同梱してきたのだと私は思いました。
事実5500は、メーカープロファイルを使っても、いやむしろ使った方が好結果が得られ、メーカー純正紙を使ってる分には、カスタムプロファイルは必要ないと言えるほどの性能の良さで、プロカメラマンのスタンダード機になったのでありました。
ということが、5500にPhotoshopElementsが同梱されるようになった理由だと私は解釈したのですが、そういった解釈、説明をされているのは目にしたことがないので、私の単なる推測であるとご理解下さい。
さて、デジタル写真の世界では「昨日の常識は今日の非常識」と言われるほど、規格や考え方、フローが変化しています。
最近ではそのフローの変化も緩やかになって安定してきたように思いますが、それでも技術革新によって、「昔はこんなに苦労したのにね〜」とか「昔の機材は高かったよね〜」という溜息はまだまだ続いているようです。
カラーマネジメントのワークフローもしかり、だと思います。
カラーマネジメントだのなんだのはカメラマンの仕事じゃないんだから、そんなの知らなくてもイイと言い切るのは、現状ではちょっと暴論だと思います。
でも、小難しいこと知らなくてもきちんと正確に思うような色が出てくれれば、それはそれに越したことはありません。
なので、カラーマネジメントなんてノウハウを振り回すことなしに、見た目のイメージを損なわず、正確に、そして直感的に、デジタルデータをハンドリング出来るようになれば有難いです。
そう言ったときに、プロ機に求められるのは、リニアに反応してくれるハードだと思います。
デジタル写真のデータは、現状ではAdobeRGBが最大のように一般には思われていますが、将来的にはもっと拡大する可能性はあると思います。
今でもRAWで撮影してAdobeRGBよりも広い色空間に展開することは可能です。
そしてプリンタの色空間にしても、ある部分ではAdobeRGB以上の色域がある機種もあるようです。
データにリニアな反応を重視する場合は、そうしたプリンタのポテンシャルを最大には生かしていないこともあるでしょう。
ことデータがsRGBだと、PX-5600では色再現能力をフルに活用することにはなりません。
カラーマネジメントのフローの中であれば、リニアな反応のほうが一貫した再現が得られるので、そのほうが良いのですが、エプソンはデータに対するリニアリティーだけでなく、プリンタの色域を最大限生かしたプリントというのも提案したいようです。
Photoshopで色変換ばっかりされたんじゃ〜、うちのプリンタの性能は100%出せない!と思ったからでしょうか。
それを実行するのが、EPSON Print Plug-in for Photoshop に搭載されている、「ダイレクトマネジメント」だと思います。
先日簡単に試してみましたが、同じRAWファイルから、sRGBとAdobeRGBに展開したファイル(マクベスチャートの画像)を、ダイレクトマネジメントででプリントしたら、両方ともほぼ同じ色調になりました。
カラーマネジメントしてプリントするとsRGBのほうが彩度が低い(飽和しないように調整して展開したため)のですが、ダイレクトマネジメントでは、プリンタで出せる色域まで拡大してプリントされるようです。
EPSON Print Plug-in for Photoshopを使っても、プロファイル変換によるカラーマネジメントももちろん出来ます。
デフォルトでは、用紙にあったメーカープロファイルが自動的にあてがわれるようですが、自分で作成したカスタムプロファイルを使用することも可能です。
そしてOSのプリントダイアログを立ち上げることなく、そのままプリントを実行できるので、例の「ドライバの色補正をオフ」という手順を忘れて失敗するというリスクがありません。
でも、ここでの最大のキモは、私はPhotoshopによるAdobeColorEngine(ACE)を使った色変換ではなく、EPSON CMMというエプソンの色変換エンジンが使われることにあるのでは?と思っています。
もしかしたら、Photoshopよりももっとプリンタに最適化された変換がされているのではないか・・・・。
とは言うものの、今のところの試験では、目立った差異を認めることはありませんが。
(そもそも、そんなに目立つような違いがあっても困るし。)
ちょっと話題の意図が明確さを欠いてきましたが、つまりはエプソンも、Photoshopばっかしには変換させたくない、という意地を示したかったのが、Print Plug-in for Photoshopではなかったかと。
これも、私の推量なので、鵜呑みにはしないで下さい。
で、最後に言及したいのが、EPSONの画像ブラウズ、レイアウト、プリントソフトであるImaging WorkShopです。
Imaging WorkShopから、ブラウズ部分をなくし、機能を少なくしてプラグインにしたのがPrint Plug-in for Photoshopだと思うのですが、Print Plug-in for Photoshopはブラウズ部分がなくなった分、Photoshopで開いている画像しかプリント出来ないので、逆に使い勝手が悪くなっていると感じました。
Imaging WorkShopはスタンドアローンのアプリケーションです。
プロファイル変換によるカラーマネジメントも出来ます。
使われる変換エンジンは、EPSON CMMです。
ならば、PX-G5300やPX-5600には、PhotoshopElementsなんて同梱しないで、Imaging WorkShopを同梱した方がいいのではないか?
そう強く思いました。
プロカメラマンならPhotoshopはほとんどの人が持っています。
その上でPhotoshopElementsをバンドルされても、使っている人は少ないと思います。
私もまわりで使っているというのをほとんど聞いたことがありません。
Imaging WorkShopがバンドルされたからと言って、ではPhotoshopの代わりにそれを使うか?というと、やはりそちらも使う人は少ないかも知れません。
でも、Photoshopにはないプリントのレイアウト機能などが充実しているので、使い勝手はあると思います。
ブラウズ機能もあるので、Easy Photo Printのような、画像を指定してあとはおまかせでプリントというのにも使えるのではないでしょうか。
そうした意味で、プリンタの機能や性能も生かせるし、ハイアマチュアやプロのニーズにまで応えられるアプリには、PhotoshopElementsやEasy Photo Printではなく、エプソン純正Imaging WorkShopが、バンドルするのにぴったりなソフトだと思いました。